家族歴について
私が医師になったばかりの頃、(今もそうだと思いますが、)患者さんの問診をとるのが役割でした。
入院してくる患者さんに、今の病歴(現病歴)を聞き、過去の病歴(既往歴)を聞きます。カルテの欄には家族歴というところもあって、患者さんのご家族の病歴について聴取して記入する欄です。それが済むと、現症といって患者さんの身体の診察を行って、胸部聴診はどうであったとか、お腹の痛む部位はどこそこだとか、しこりがどこにあって、大きさや硬さなどを記入していくのです。これらをすべて記入して、カルテの最初のページが埋まるのです。
その中で、最も軽視されていたのが『家族歴』だったと思います。家族構成を聞いて、その人たちにどんな病気があって、どんな治療をしたのか、または死亡しているならその原因は何であったかなどを聞くのですが、患者さん自身も記憶が曖昧だったり、その場にいない方のことを根掘り葉掘り聞くのも気が引けて、空欄だったり後から看護師さんの記録を書き写したり。要するに軽視していたのです。
ですが、今は家族歴、とても大切なことだと思っています。私自身、祖父が心筋梗塞で亡くなり、父も脳卒中2回やって高血圧と脂質異常と糖尿病を持っていたので血管病変を引き起こす、血圧とコレステロール値には敏感になっています。家族は遺伝的な要因はもちろん、食生活を共にしている時間が長いので、同じような病気になることが多いのです。高血圧や脂質異常、糖尿病は家族で同じ病気になることが多いですし、がんは遺伝的な要因も強いです。膵がんの方や前立腺がんの方が近い家族にいる方は要注意です。また、遺伝ではありませんが、ご両親に胃潰瘍や胃がんの既往がある方は、ピロリ菌を幼少時にもらい受けて自分も胃潰瘍や胃がんのリスクを負うこともあります。
家族歴・・・大切な病歴です。皆さんもご家族の病歴についていろいろ知ってみてはいかがでしょうか。